ふくろうでいきたい

ゆるくゆるく。からだもこころも。

古傷のはなし。

大きなケガをしたり、入院したりしたことはあるだろうか?

私は幼い頃から活発で体が資本な生き方をしていた為入院も骨折もした事がない。



だが1度だけ、1週間ほど松葉杖を使って生活していた事がある。


あれは小学校6年生の頃だったろうか。

私の住んでいる市には、市の体育大会というものが存在し指定された学校の生徒たちは学年全員で参加するものの、全員でやるのは大縄跳びやソーラン節。その他は代表者数名の競技で順位を決めるというシビアなものであった。


競技の中でもそれなりに盛り上がる、リレーの選手を決める為、先生から数人に声がかかった。その中に私も選ばれ、高揚感に身を包まれながらメンバーを決める条件を聞く。ルールはいたってシンプル。

100m走でタイムの早かった4名がそのままリレーの選手になるというものだった。

先生から声がかかったのは10数人。

走る事はあまり好きでなかったが、その数人に選ばれた事と初めての体育大会に、持てる全てを出し切ろうとわくわくしながら挑む。

100mを走りきり、ゴール地点で先生にタイムを聞こうと振り返った瞬間、右足首に違和感。

ピリっと感じる痛みに眉を顰めながら先生にタイムを聞くも、全員走り切ってから発表するとのこと。

疲れと右足に痛みを抱いていた私は友人と座って終わるのを待った。

全員が走り終わり先生からメンバーが発表され、私は学年3位で無事リレーのメンバー入りを果たしたのである。

友人達に背中を叩かれ檄をいれられる。

私も笑顔で対応し、声を掛け合ったがその叩かれる衝撃にも何か違和感がある。

そう、右足に地鳴りのように響くのだ。

別に足を狙って叩かれている訳ではない。みんな座っている私の背中や肩を叩いてくれる。

なのになぜそこに違和感を感じるのかいまいち理解できず、立ち上がろうとした。


が、立てない。

立ち上がろうと力を入れるが、激痛が走り平衡感覚を失う。

ひどい目眩だ。

周りの声も遠くなり脂汗がどっと噴き出る。


友人に保健室による事を伝え、1人で片足で跳ねながら向かおうとするが、地獄のケンケンタイムである。

ケンケンの衝撃の度に感じる激痛に汗が頬をつたい、背中と胸に体操着が張り付く。荒い息を整えることもできず乱暴に保健室のドアを叩くと、細身の美人な先生が柔らかい笑みを向けて天女のように迎え入れてくれる。

その姿にホッとしたのも束の間、即親を呼び出され近くの整骨院へ運ばれた。


病院の診察では走り切った後、その勢いを殺さないまま右足を軸に回転し振り返ったことで、ものすごい圧力が1点に集中し内出血を起こしているとのことだった。

全治約2ヶ月。

市の体育大会が終わる頃だった。

なんともアホである。



後日先生からリレーのメンバーは改めて他の人になること、私は松葉杖の生活になるので大会には不参加という事が伝えられる。

友人達は驚いたがそれ以上に笑いが堪えられず、暫くネタ扱いされた。

要約すると、走って、回って、松葉杖。

多感な小学生だ。面白くないワケがない。


私はというと、松葉杖が意外に邪魔だったので

1週間ほどで持ち歩かなくなり、馬鹿にしつつも手を貸してくれる友人のおかげで、最終的には全員参加の種目には出場する事ができた。



幸運なことに、それ以降大きな怪我もなく現在に至っている。

死ぬまでに1度くらい骨を折るのだろうか、などと考えながら冷えて強ばった右足首をさするとあの日の痛みを思い出し、身震いするのだった。

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